2013年9月15日日曜日

麻生副総理・財務大臣の「ナチス発言」への抗議文掲載

麻生副総理・財務大臣の「ナチス発言」への抗議

2013年9月15日
内閣総理大臣   安倍晋三 殿
副総理・財務大臣 麻生太郎 殿

私たちは、麻生副総理・財務大臣が7月29日に行われた講演での憲法改正に関して「ナチスの手口を見習ったらどうかね」という発言に抗議し、麻生副総理・財務大臣に、ファシズムの犠牲となったすべての人々への謝罪と、即刻の辞任を求めるものです。
また、安倍首相には、麻生氏の発言を公式に強く非難するとともに、麻生副首相の任命責任をとって内閣総辞職することを求めます。

8月1日、麻生氏は、「私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。」「私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい。」として、発言を撤回しました。
そして安倍首相もこれを受け入れ、この件はもう問題にしないという姿勢をとっていますが、発言の撤回そのものは当然として、7月29日の発言は、「あの手口学んだらどうかね」としてナチスに言及していることから、「悪しき例」として取り上げたものでないことは明らかです。

第二次世界大戦時、ナチスのファシズム政権は、ユダヤ人迫害や強制収容所収容、大量虐殺、表現の自由の弾圧、反対派の弾圧、数々の戦争犯罪など、人類史上最悪の人権侵害をもたらしました。この反省のもと、第二次世界大戦後の国際社会は、人権侵害をもたらし、民主主義を否定するファシズムを二度と繰り返さないという共通認識の上に成立しています。また、EU加盟諸国ではナチスを賛美・肯定する発言は「犯罪」とされています。そうした国際社会の中で、今回の麻生副総理・財務大臣の発言は民主主義国家の主要閣僚としてあるまじき、恥ずべき所業です。
麻生副総理・財務大臣は、ファシズムの犠牲となったすべての人々に即刻謝罪し、辞任すべきです。

また、麻生副総理・財務大臣は、発言の中で「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった」と述べています。
しかし、実際にはナチス憲法は存在せず、ドイツのワイマール憲法はナチスの恣意的な全権委任法によって停止に追い込まれました。その後、ナチス自らが国会議事堂に放火し、共産党に罪をなすりつけて罪なき人々を大量に強制収容所へ送り、処刑しました。こうした動きに反対した人々は、苛烈な人権弾圧を受け、表現の自由を奪われました。
こうした人権侵害の歴史を無視・歪曲し、さらに日本の憲法改正のためにその「ナチスの手口を見習え」とは、戦後の民主主義の否定にほかならず、言語道断です。

そして、「集団的自衛権」の容認のための「国家安全保障基本法」の制定、恣意的な法制局人事などは、まさに現憲法の平和理念をなし崩し・改悪する、「ナチスの手口」そのものだと言わざるを得ません。

私たちは、この言語道断の発言に強く抗議するとともに、麻生副総理・財務大臣がファシズムの犠牲となったすべての人々へ謝罪し、発言の責任をとって、直ちに辞任することを強く求めます。
同時に、安倍首相に対しては、麻生氏の発言を公式に強く非難するとともに、麻生副総理・財務大臣の任命責任をとって内閣総辞職することを求めます。

以上

平和事務所 スタッフ有志